院長の言葉 くも膜下出血について

くも膜下出血を語る上で私にとって忘れえぬ患者と言えば私の父です。医師になって3年目、父が突然の激しい頭痛がして嘔吐していると母から電話がありました。 CTが撮れる病院をすぐに受診するよう母に伝えた1時間後に先輩の脳外科医から電話があり、「くも膜下出血だった、しかもタクシーを降りてから歩いて病院まで来られたよ。」 しまった、まさかタクシーで病院に行くとは思ってもいませんでした。「ご近所に心配をかけるし、商売もしているから店主が倒れたとなると良くないとお父さんが言うもんだから。」 こういう時こそ、救急車を呼ぶべきなんだと母に説教しても始まりません。幸い父は2か月後に社会復帰しました。 当時は開頭クリッピング術しかありませんでしたが、現在は開頭せずにカテーテルを使って瘤(こぶ)内にコイルを詰める治療が主流です。

脳血管障害はある日突然症状が出現します。まさかと思っても突然の嘔吐を伴う今まで経験したことのない頭痛が出た時は、くも膜下出血を疑って救急車を呼んでください。 心配な方は脳ドックを受けてみられてはどうでしょうか。仮に瘤が発見されたとしてもすぐに手術を受ける訳ではありません。 直径5mm未満の瘤が見つかることが多く、定期的に脳外科外来でMRIを撮影して経過をみていきます。 当然、血圧の管理、ストレスを溜めない、便秘の管理が重要になります。脳血管障害の中で唯一、事前に検査して予防できるのはくも膜下出血です。

2022年(令和4年)11月院長 鬼塚 正成