第34回長崎救急医学会のご案内「断らない救急医療を目指して」

8年前、当院の院長になって最初に対外的に取り組んだのは当院を長崎医療圏の救急輪番病院に入れてもらう事でした。輪番病院として認可を受け、補助金をもらい、救急病院として一般の方に認めて貰いたい、そういう思いでした。医師会を通じて動向を探りましたが、輪番病院になるには大きな壁が存在していました。壁を乗り越えるべく水面下で動くのが得策か、敢えて入らずに今の救急体制でいくか悩みました。そんな時に労働基準監督署が当院の宿直体制に対して調査で入ってきました。医師の働き方改革を考えると、輪番病院に入らない現状が宿直許可は取り易いことが分かりました。もう一つは経営面です。輪番日は患者が救急車で来て満床になるが、非輪番日は空床が出てしまうでは経営上よくありません。売れているパン屋は早朝に作ったパンが売り切れるまで売り尽くし、早々に閉店します。そこで当院では救急隊との連絡を密にしました。女性ベッドが満床になったが男性ベッドはあと2床空いている、空床情報を毎日、随時救急隊へ電話連絡します。救急隊本部から各救急車には連絡が入り、きっちり男性2床はその日のうちに埋まってしまいます。済生会長崎病院のように全室個室だと、男性、女性ベッド関係なく、満床まで受入れ可能ですから羨ましく思うことがあります。救急車受け入れ台数をベッド数で割り、ベッド数の割に救急車を沢山受け入れているのは済生会が第1位で、うちは第2位です。

不思議なことに、一般的な医療経営コンサルタントは「看護師不足で使用しないベッドは閉鎖して、業務をコンパクトにして効率性を上げ、病床稼働率を改善しましょう」と、いかにも耳に心地よい悪魔のささやきを行います。しかし、救急病院で赤字脱却どころか、泥沼に陥っている病院を最近みかけます。看護師が不足しているのであれば、患者対看護師の割合を7:1から10:1に落としてもベッド数は減らさずに運営した方が経営上はメリットが大きいのです。ちなみに長崎医療圏では長崎記念病院、重工記念病院、百合野病院、当院が10:1の看護基準です。救急病院は許可病床数を使い切って病床利用率を上げ、かつ救急車の受け入れはいつでも可能な限り応需する、これが経営上重要となってきます。特に6月からの診療報酬改定では救急医療加算の項目が軒並み上昇し、追い風となります。

さて、西彼杵郡長与町に新築移転し、5年が経ちました。移転時はコロナ禍で、大きな壁は取り除かれ、輪番病院に入ってほしいと長崎市から依頼がありました。当院の体制は出来上がっていましたので輪番を断ると、今度はコロナ輪番というシステムをつくろうとする市の会議の場で、意見を求められました。輪番をつくるよりも空きベッド数を公開し、空いている病院がコロナ患者さんを受けるのが筋であり、輪番をつくる意味がないと発言しました。結局、このコロナ輪番制は廃案になりました。そんな当院に昨年、長崎救急医学会の主幹になってほしいという依頼が来ました。当院が選ばれた理由は聞かずに受けましたが、コロナ禍で当院が積極的にコロナ患者さんを受け入れてきたことが、地域で評価されたのだと好意的に解釈しています。

長与町内の介護老人保険施設では夜間、状態が悪い入所者さんが出ると、バイタルサインをモニタリングし、AI(人工知能)を利用します。多くの場合、翌朝まで待って施設担当医である開業医へ相談し、開業医から当院へ肺炎、心不全、尿路感染の入院依頼が来ます。夜間、施設からの入院依頼は減り、日中、マンパワーがある時間帯に依頼が来て助かっています。「夜間の救急車を適正に利用してほしい」という声が聞かれるほど、努力している施設の活動を知ってもらうため、9月に開催する同医学会で施設担当者に講演をしていただくよう依頼しました。

第34回長崎救急医学会のテーマは「断らない救急医療を目指して」にしました。特別講演では断らない救急をJCHO諫早総合病院で院長として長年実践されてきた長郷国彦先生にお願いしています。西海市に開業した西海救急クリニックの現状、大村市民病院が行っている施設までのお迎え救急システム、県内で努力している病院、施設からの発表も一般演題ではお願いしています。9月の第1週ですと残暑が厳しい時候でしょうが、長崎ブリックホール国際会議場にて忌憚のない意見交換をし、明日への救急医療に少しでも貢献できれば幸いです。 皆さんの参加をお待ちしております。

2026年(令和8年)9月院長 鬼塚 正成

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